
単線(たんせん)は1本の太い銅線、より線は細い銅線をたくさん束ねた線のことです。電線の「中身」はこの2タイプに大別され、それぞれ得意な場所が違います。壁の中は単線、手元のコードはより線——この使い分けには理由があります。
やさしい解説
電線の構造から見てみましょう。電気を流す金属の芯を「心線(しんせん)」、それを包む絶縁体を「被覆(ひふく)」と呼びます。心線が1本の太い線なら単線、細い線の集合ならより線です。見た目はそっくりな電線でも、皮をむけば中身の個性はまるで違います。
単線の持ち味は、形が決まること。曲げればその形を保ち、しっかり固定できます。壁や天井の中に固定してしまう屋内配線(VVFケーブルなど)にぴったりで、接続端子への差し込みも確実です。スイッチやコンセントの裏の差込口は、単線を前提に設計されています。だからこそ、器具交換も資格者の領分なのです。
より線の持ち味は、しなやかさ。細い線の束はよく曲がり、くり返しの折り曲げにも強い。掃除機のコード、ドリヤーのコード、延長コード——動かして使うものは、みんなより線です。スマホの充電ケーブルの中身も、ごく細い線の束。しなやかさが命の場所に、単線の出る幕はありません。もし単線で作ったら、硬くて取り回せないうえ、曲げのくり返しで折れてしまいます。
「太い1本は骨、細い束は筋肉」とイメージすると分かりやすいかもしれません。動かない骨組みには単線、よく動く場所にはより線。適材適所の見事な分業です。電気の流れやすさはどちらも銅ですから、性能ではなく「動くか動かないか」で選ばれているのがポイントです。
暮らしとの関わり・注意点
この使い分けを知ると、やってはいけないことも見えてきます。その代表が、「コード(より線)を固定配線の代わりに使う」こと。延長コードを壁に打ち付けて恆久配線にする、コードをつぎ足して天井を邀わせる——これらは法令違反であり、発熱・火災のもとです。コードはあくまで「仮の、動かせる線」なのです。固定して長く使う配線が必要なら、それはVVFケーブルによる工事の出番です。
コードの扱いにも、より線ならではの注意があります。束ねたまま使うと热がこもる、家具の下敷きは中の細い線が切れる(断線)、根元の折り曲げグセも断線のもと——「しなやかだが、いじめには弱い」と覚えてください。ペットのかじり癒にも、コードカバーなどで備えたいところです。断線しかけたコードは、そのまま使い続けると発熱や火花の原因になります。
被覆の状態も大切です。ひび割れ、変色、硬化は劣化のサイン。芯線が見えるほど傷んだコードは、テープ補修ではなく交換が正解です。コードだけ交換できない機器なら、修理か買い替えのタイミングです。
住まいの中で「単線の世界」と「より線の世界」の境目になるのが、コンセントです。壁の中の固定配線はプロの領域、コンセントから先はみなさんの領域。その境目を守ることが、電気の安全の第一歩です。延長コードは「コンセントの延長」であって「配線の代わり」ではない——この一線を、ひぜ覚えて帰ってください。
関連する用語
単線が主役の配線材は「VVFケーブル」、束ねた配線の保護は「電線管」の項でどうぞ。コードの安全は「たこ足配線」「トラキング現象」、接続の話は「圧着接続」もあわせて。