
コンロ、ストーブ、給湯器——家の中には「火と熱の島」が点在しています。火気に近い場所の配線には、それに応じた作法があります。原則はただひとつ、「熱は被覆の大敵。だから近づけない」。今回はその実践編です。台所と冬の暖房まわりが、主な舞台になります。
やさしい解説
電線の被覆は樹脂でできています。炎に触れなくても、熱を浴び続けるだけで硬化し、ひび割れ、絶縁の力を失っていきます。ある日突然ではなく、徐々に危険へ近づくのが厄介なところです。第32回で「電流による自己発熱」を見ましたが、外からの熱はそれに上乗せされる負担。だから内線規程は、火気を使う器具のそばの配線に距離や遮へいを求め、熱にさらされる場所では耐熱性のある電線や管で守るよう定めています。熱は炎より静かに、しかし確実に配線を老けさせます。
ガス管との関係も大切です。電線とガス管・水道管は接触させないのが決まり。万一の漏電時に、ガス管が電気の通り道になる事態を防ぐためです(アースをガス管につないではいけない理由——第46回——と同じ発想です)。キッチンの壁の中では、電気・ガス・水道の三者が近接しがちだからこそ、互いの距離が設計されています。壁を開けたときに見える整然とした間隔は、この設計の表れです。

暮らし・現場との関わり
暮らしの中の「火気と電気」は、コードの使い方に表れます。コンロの奥のコンセントから炊飯器のコードが五徳のそばを横切っていないか。ストーブの温風の通り道にタップが置かれていないか。電気ケトルのコードがIHの縁に触れていないか——熱の地図とコードの地図を重ねてみると、意外な交差点が見つかります。コードの硬化や変色は、熱を浴びてきた履歴書です。
キッチンリフォームは、この交差点を解消するチャンスです。調理家電の定位置を決め、熱源から離れた場所にコンセントを増設すれば、コードが火気をまたぐ生活から卒業できます。IHへの切り替え(第34回の専用回路)とあわせて、熱と電気の動線設計をご相談ください。使いやすさと安全は、同じ図面の上で両立できます。
まとめ
火気のそばでは、離す・遮る・耐熱で守るが配線の作法。ガス管と接触させないのも大切な決まりです。次回は毎日触れる主役——コンセントの施設ルール(高さ・向き・防水・数)です。
※本記事は2026年7月時点の制度をもとに、内容をやさしく要約したものです。個別の判断は一次情報や専門家にご確認ください。