
電気設備技術基準(でんきせつびぎじゅつきじゅん)——通称「電技(でんぎ)」は、すべての電気設備が守らなければならない「最低ライン」を定めた国のルールです。正式には「電気設備に関する技術基準を定める省令」といい、電気事業法にもとづいて経済産業省が定めています。
やさしい解説
中身はどんなものでしょうか。感電や火災を起こさないこと、他の設備の働きをじゃましないこと——電技には、こうした「達成すべき性能」が短い条文で書かれています。意外なことに、具体的な数字はほとんど出てきません。「安全に施設せよ」という目標を掲げる、性能規定と呼ばれるスタイルです。「時速を守れ」ではなく「安全に運転せよ」と書くような、目標型の書き方です。
なぜ抽象的なのかというと、技術は日々進歩するからです。細かい工法まで法令に書き込むと、新しい技術が出るたびに時代遅れになってしまう。そこで国は「何を守るか」だけを定め、「どう守るか」は次回ご紹介する解釈や民間規格に委ねる二段構えにしました。もうひとつ大切なのは「最低ライン」だという点です。これを下回る設備は違法ですが、上回るぶんには自由。実務ではより高い水準(内線規程など)を目指すのが普通です。ぎりぎりを狙わず余裕を持って上を行くのが、職人の世界の常識でもあります。

暮らし・現場との関わり
電技は「すべての電気工作物」に適用されます。つまり、ご自宅の配線も対象です。資格のない方が基準を無視した配線をすれば、危険なだけでなく法令違反にもなります。また、設備は使い続ける間ずっと基準に適合させておく義務があるため(第6回で詳しくご紹介します)、古くなった配線の放置にも法律の目が向いています。リフォームの機会に配線も見直す価値がある理由のひとつです。
私たち工事の現場では、日常的に開くのは解釈や内線規程のほうですが、その根拠はいつも電技です。検査での指摘や是正の最終的なよりどころも、この省令にあります。いわば、現場の判断の「北極星」です。ふだん意識しなくても、進む方向はいつもここで決まっています。
まとめ
電技は、全設備共通の最低ラインを定める国の省令。次回は、この抽象的なことばを具体的な数字に翻訳する「電技の解釈」をご紹介します。用語集の「絶縁抵抗測定(メガー)」や「接地工事の種類」で登場した数字たちの出どころが、いよいよ見えてきます。
※本記事は2026年7月時点の制度をもとに、内容をやさしく要約したものです。個別の判断は一次情報や専門家にご確認ください。