スイッチを押せば明かりがつき、コンセントにつなげば家電が動く。私たちは毎日たくさんの電気を使っています。でも、「電気って、そもそも何なの?」と子どもに聞かれたら、うまく答えられるでしょうか。目に見えないだけに、意外と説明がむずかしいものです。今回は、この「電気の正体」を、できるだけやさしく、小学生にも伝わる言葉でひもといていきます。読み終えるころには、あなたも家族に説明できるようになっているはずです。
電気の正体は「電子」という小さな粒
結論から言うと、電気の正体は「電子(でんし)」という、とても小さな粒の動きです。世の中のすべてのもの——机も水も空気も、そして私たちの体も——は、「原子」という小さなつぶが集まってできています。その原子の中心には「原子核」があり、そのまわりを、さらに小さな「電子」がまわっています。この電子こそが、電気の主役なのです。
電子は、マイナスの性質を持った粒です。金属のように電子が動きやすい物質の中では、一部の電子が自由に動きまわることができます。この電子がいっせいに同じ方向へ動くこと、それが「電気が流れる」ということの正体です。つまり電気とは、目に見えないほど小さな電子が、大勢でいっせいに動いている現象なのだ、と考えるとイメージしやすくなります。

電気が「流れる」ってどういうこと?
「電子が動く」と言っても、1個の電子が電線の端から端まで走っていくわけではありません。イメージしやすいのは、ぎっしり詰まった玉突きや、バケツリレーです。片方から玉を押し込むと、反対側からすぐに玉が出てきますよね。電線の中でも同じように、電子が次々と隣を押していくことで、離れた場所の電子がすぐに動きだすのです。
だから、スイッチを入れた瞬間に、遠くの電球がぱっと光ります。電子そのものはゆっくりとしか進んでいなくても、「押す力」は光に近い速さで伝わっていくからです。この「押す力の強さ」が電圧、「流れる電子の量」が電流にあたります。むずかしそうな言葉も、電子の動きで考えると、意外とすんなり理解できるのです。
おもしろいことに、「電流の向き」は、実は電子が動く向きとは逆に決められています。これは、電子の正体が分かるよりずっと前に、昔の科学者が「プラスからマイナスへ流れる」と決めてしまったからです。あとになって「本当は逆だった」と分かっても、すでに世界中で使われていたため、そのままにされているのです。こんなところにも、歴史のなごりが残っています。
電気を通すもの・通さないもの
ここで大事なのが、「電子が動きやすいかどうか」は、物質によって大きく違うということです。銅や鉄、アルミといった金属は、電子が自由に動けるため、電気をよく通します。こうした物質を「導体」と呼びます。電線の中身に銅が使われているのは、まさにこのためです。
反対に、ゴムやプラスチック、ガラス、乾いた空気などは、電子がその場からほとんど動けません。そのため電気を通さず、これらを「絶縁体(ぜつえんたい)」と呼びます。電気を通したくない部分には、この絶縁体が使われます。「通す」と「通さない」——この2種類をうまく組み合わせることが、電気を安全に使うカギになります。
ちなみに、導体と絶縁体のちょうど中間の性質をもつ「半導体(はんどうたい)」という仲間もあります。条件によって電気を通したり通さなかったりをコントロールできる、とても便利な物質で、スマホやパソコンの心臓部に数えきれないほど使われています。現代のハイテク機器は、この半導体なしには成り立ちません。電気の世界は「通す・通さない」の二択だけではないのですね。

静電気と電流はどう違う?
「電気」と一口に言っても、実は2つの顔があります。ひとつは、冬にドアノブでバチッとくる「静電気」。これは、電子がどこかにたまって、動かずにじっとしている状態です。もうひとつが、電線を流れて家電を動かす「電流」。こちらは、電子が流れ続けている状態です。
同じ電子でも、「たまっている」か「流れている」かで呼び名や性質が変わるのです。静電気は一瞬でパチッと放電して終わりますが、電流は流れ続けることで、明かりをつけたり、モーターを回したりと、じっくり仕事をしてくれます。私たちが暮らしで使っているのは、おもにこの「流れる電気」のほうなのです。
電気はぐるっと一周して初めて使える
もう一つ知っておきたいのが、電気は「一周する道」がないと流れない、ということです。電気の通り道が、発電する側から機器を通ってまた戻ってくる——この輪のようなつながりを「回路」と呼びます。どこか一か所でも道が切れていると、電気は流れません。スイッチとは、この道をつないだり切ったりして、電気の流れをコントロールする部品なのです。
スイッチを「切」にすると回路の道が切れて電気は流れず、「入」にすると道がつながって電気が流れ、明かりがつきます。豆電球と乾電池を導線でつなぐ、あの理科の実験を思い出す方もいるかもしれません。家じゅうの複雑に見える電気の仕組みも、根っこはあのシンプルな「回路」と同じなのです。
逆に、電気の通り道が、本来とは違うところでつながってしまうと大変です。電気が一気に流れすぎて、とても危険な状態になります。これが「ショート(短絡)」と呼ばれるもので、火花が出たり、発熱して火災の原因になったりします。だからこそ、家の電気には、流れすぎを察知して自動で電気を止める「ブレーカー」が備わっているのです。回路の考え方は、安全とも深くつながっています。
電線は「通す」と「通さない」の組み合わせ
ここまで分かると、電線の作りにも納得がいきます。電線の中心には、電気をよく通す銅(導体)が入っています。そして、そのまわりは、電気を通さないゴムや樹脂(絶縁体)でしっかり包まれています。中の銅が電気の通り道になり、外側の被覆が、私たちがさわっても感電しないように守ってくれているのです。
もし電線に被覆がなく、銅がむき出しだったら、さわった瞬間に感電してしまいます。「通すもの」と「通さないもの」を組み合わせることで、電気は安全に、必要な場所だけを流れていけるのです。電気製品のコードも、家の壁の中の配線も、すべてこの考え方でつくられています。

電気を正しく理解すると、安全に使える
電気の正体が「電子の動き」だと分かると、なぜ濡れた手で電気製品を触ると危ないのか、なぜ被覆の傷んだコードが危険なのかも、すっと腑に落ちます。水は電気を通しやすく、被覆が破れれば銅がむき出しになるからです。正体を知ることは、電気を安全に使う第一歩でもあります。仕組みを知れば、こわがりすぎず、油断もしすぎず、上手に付き合えるようになります。
まとめ
電気の正体は、原子の中にある小さな粒「電子」の動きでした。電子が動きやすい導体を、動けない絶縁体で包むことで、私たちは電気を安全に使えています。目に見えない電気も、「電子がいっせいに動くこと」とイメージすれば、ぐっと身近に感じられますね。ぜひお子さんにも話してみてください。