
力率(りきりつ)とは、送られてきた電気のうち、実際に有効な仕事をしている割合のことです。100%に近いほど、電気をムダなく使えていることを表します。おもに工場や店舗など、事業所の電気で登場することばです。
やさしい解説
力率は、よく「ジョッキのビール」にたとえられます。ジョッキいっぱいに注がれていても、上のほうの泡は飲めませんよね。送られてくる電気の全体がジョッキ1杯分だとすると、実際に飲める中身が「有効に働く電気」、泡が「働かない電気」。この中身の割合が力率です。泡が少ないほど(力率が高いほど)、電気を効率よく使えている、というわけです。力率は0〜100%で表され、100%が理想。事業所の契約では85%が基準とされ、そこからの数%の違いが、年間の電気代では意外な差になります。
力率が下がる主な原因は、モーターを使う機器です。エアコンの圧縮機、ポンプ、工場の機械などは、動くために磁力をつくる電気が余分に行き来するため、どうしても「泡」の部分が生まれます。そこで、進相コンデンサという装置を取り付けて泡を減らし、力率を改善する対策が行われます。
家電で見ると、電気ストーブや電気ケトルのように「熱をつくる家電」は、送られた電気をほぼそのまま熱に変えるため、力率はほぼ100%です。いっぽう、モーターや変圧器を内蔵した機器は力率が下がりやすい、という傾向があります。ちなみに、見かけ上の電気の大きさを「VA(ボルトアンペア)」、実際に働く分を「W(ワット)」と呼び分けることがあり、力率はこの2つの比率にあたります。
暮らしとの関わり・注意点
一般のご家庭では、力率を意識する場面はほとんどありません。家庭の電気料金は使った電力量(kWh)で決まり、力率は請求に直接影響しないからです。「そういう指標があるんだな」と知っておけば十分です。
いっぽう、工場や店舗など事業所の電気料金では、力率が基本料金の割引・割増に関わってきます(力率割引)。力率を85%より高く保つと基本料金が安くなるしくみがあり、進相コンデンサの設置や更新が、電気代の節約に直結するのです。設備の古い事業所では、コンデンサの劣化で、知らないうちに力率が落ちているケースも見られます。「最近、基本料金が上がった気がする」という事業者さまは、一度点検してみる価値があります。
力率の測定や改善工事は、専門的な領域です。気になる場合は、電気工事店や電気主任技術者にご相談ください。
このVAとWの違い、家庭でも出会う場面があります。それが、非常用の発電機やUPS(無停電電源装置)を選ぶとき。容量が「○○VA」と表記されていたら、実際に使えるWはそれより少なめ、と考えて余裕を持って選ぶのが失敗しないコツです。
じつは最近の家電の多くには、「力率改善回路(PFC)」という電子回路が組み込まれていて、機器の側でも泡を減らす工夫が進んでいます。パソコンの電源やLED照明などがその例です。電気を送る側と使う側、その両方の見えない努力で、電気のムダは少しずつ減らされているのですね。
関連する用語
電気のパワーの基本は「消費電力(W)」の項をどうぞ。力率と関わりが深いのは、モーターを回す「三相(動力)」、事業所の受電設備「キュービクル」、保安を担う「電気主任技術者」です。