
日本の住まいの主役は、今も木造です。柱・梁・間柱——建物の骨組みである造営材(ぞうえいざい)が木でできている家には、配線にも木の家ならではの作法があります。キーワードは「燃えやすい材への礼儀」です。木と電気は、作法さえ守れば長く良い間柄でいられます。
やさしい解説
木造の配線で気を配るのは、まず「貫通部」。柱や梁に穴を開けてケーブルを通すとき、木の切り口とケーブルが直接こすれ続けると、長い年月の間に被覆が傷みます。だから貫通部には保護の管(がい管など)を入れて、木と電線を縁切りします。構造材に開けてよい穴の位置や大きさに建築側の決まりがあるのも、木の家らしいところです。電気と建築、二つの目で穴ひとつを決めています。
次に「固定」。VVFケーブルを柱に沿わせるときはステープルで留めますが、強く打ちすぎれば被覆がつぶれ、間隔が粗すぎればたるんで傷みます。決められた間隔で、傷めずに、まっすぐ——地味な作業に技量が出ます。作法どおりの固定は、見た目にも美しいものです。そしてもうひとつ、モルタル外壁の下地に金属の網(ラス)が入っている壁を貫通するときは、網と電線が触れないよう絶縁の一手間を加えます。漏電の思わぬ通り道を、あらかじめ断っておくのです。見えない壁の中の、小さな絶縁が家を守ります。

暮らし・現場との関わり
この作法、リフォームの現場でこそ真価が出ます。壁を開けたとき、昔の配線が保護なしで梁の穴を通っていたり、ステープルが被覆に食い込んでいたり——年月を経た木の家には、直したいポイントが見つかるものです。間取り変更や断熱改修は、配線の健康診断と作法の見直しの絶好の機会です。
古民家や築年数の長いお宅では、碍子(がいし)引きという昔の配線に出会うこともあります。趣はありますが、絶縁の劣化や増改築でのつぎはぎが心配な年代物。「昔のままの配線、うちは大丈夫?」と思ったら、一度プロの目をお通しください。古い家ほど、点検の価値は大きくなります。
まとめ
木造の配線は、貫通部の保護・正しい固定・ラスとの絶縁が三大作法。燃えやすい材への礼儀が安全をつくります。木の家の電気は、木を知る工事店へ。次回は、家の未来への思いやり——点検口とメンテナンスの話です。木の家の物語は、まだ続きます。
※本記事は2026年7月時点の制度をもとに、内容をやさしく要約したものです。個別の判断は一次情報や専門家にご確認ください。