
電気主任技術者の選任義務とは、ビルや工場など自家用電気工作物の設置者(オーナー)が、電気保安の責任者を選んで国へ届け出なければならない、という電気事業法のルールです。「作る」資格の電気工事士と並ぶ、もうひとつの柱——「守る」資格の話に入ります。ビルのオーナーや総務のご担当には、特に大切な回です。
やさしい解説
自家用電気工作物(第5回)は、自分で保安体制を組むのが大原則でした。その体制の要となる人が、電気主任技術者です。保安規程にもとづいて点検計画を立て、設備の工事・維持・運用を監督する。資格は「電験」と呼ばれる国家資格(第一種〜第三種)で、種別によって扱える電圧の範囲が変わります。多くの中小ビル・工場は第三種の範囲に収まります。電験は難関資格として知られ、電気保安の専門家の証となっています。
電気工事士との違いを一言でいえば、工事士は「正しく作る」資格、主任技術者は「正しく使い続ける」ことを監督する資格です。第6回でご紹介した技術基準適合維持義務——「使い続ける間ずっと基準に適合させる」責任を、現場で実際に支えているのがこの人たち。設置者は選任したら、遅滞なく国(産業保安監督部)へ届け出ます。選任を怠れば、それ自体が法令違反です。工事士と主任技術者、二つの資格が両輪となって設備の一生を支えます。

暮らし・現場との関わり
「うちの会社に主任技術者なんていたかな?」——キュービクルのある建物なら、必ず誰かがその任にあたっています。多くの場合は外部委託(次回のテーマ)で、月に一度やってくる「電気管理技術者」がその人。点検の案内や報告書が届くのは、保安体制がきちんと生きている証拠です。報告書には絶縁の数値など、設備の健康診断の結果が並んでいます。
もし選任も委託もないまま設備を使っているとしたら、法令違反であるだけでなく、事故のときの責任・保険・波及事故(近隣への停電)のリスクを丸ごと背負うことになります。ビルを取得した方、太陽光発電所を引き継いだ方は、契約書類とあわせて保安体制の確認を。
まとめ
電気は「作って終わり」ではなく「守り続ける」もの。その責任者を法律で明確にしたのが選任義務です。とはいえ、中小の事業所が専任者を雇うのは大変——次回は、その現実的な答えである外部委託承認制度をご紹介します。
※本記事は2026年7月時点の制度をもとに、内容をやさしく要約したものです。個別の判断は一次情報や専門家にご確認ください。