私たちが毎日使っている電気。では、世界の中で「いちばん電気を使っている国」は、いったいどこなのでしょうか。アメリカ? それとも中国? 実はこの問いも、前回の「一番電気を食う家電」と同じで、見方によって答えが変わります。「国全体の合計」で見るか、「一人あたり」で見るかで、ランキングはがらりと変わるのです。今回は、世界の電気の使われ方を、大きな視点でながめてみましょう。
国全体の総量では、1位は中国
まず、「国全体で使う電気の合計」で見てみましょう。近年の統計では、世界でもっとも電気を使っているのは中国です。しかも2位のアメリカを大きく引き離しての、ダントツの1位。続いて3位はインド、そのあとにロシアや日本などが並びます。世界の二大経済大国である中国とアメリカが、電気の使用量でも上位に来るのは、なんとなくイメージできますね。
中国が突出しているのは、世界の工場として製造業がさかんなことに加え、経済成長とともに人々の暮らしが豊かになり、家庭でもたくさんの電気を使うようになったためです。巨大な人口と、活発な産業。この2つがかけ合わさって、世界一の電力消費国になっているのです。ただし、これはあくまで「国全体の合計」の話。ここに、大事なポイントが隠れています。
ほんの数十年前まで、電力消費の世界一はアメリカでした。しかし、中国の急速な経済成長とともに、その使用量は爆発的に伸び、いまではアメリカを大きく上回っています。国の発展と電気の使用量が、いかに強く結びついているかを物語る変化です。電気は、その国の勢いをはかる“ものさし”のひとつでもあるのですね。

でも「一人あたり」だと、話が変わる
ここで注目したいのが、「一人あたり」で見るとどうなるか、です。国全体の合計は、人口が多い国ほど大きくなるのは当然のこと。中国やインドが上位なのは、そこに住む人の数がとても多いから、という面が大きいのです。そこで、総量を人口で割って「国民一人あたり、どれだけ電気を使っているか」を計算すると、ランキングは大きく入れ替わります。
たとえば、人口が10億人を超えるような国と、数百万人の国とでは、たとえ一人ひとりが同じだけ電気を使っても、合計はまったく違う数字になります。だからこそ、国どうしをフェアに比べたいときには、「一人あたり」の数字がよく使われます。ニュースで国際比較を見るときも、それが「総量」なのか「一人あたり」なのかを意識すると、その数字の意味を正しく読み取れますよ。
一人あたりで見ると、人口の多い中国やインドは、順位がぐっと下がります。代わって上位に来るのは、カナダや北欧の国々(ノルウェーなど)、アメリカ、そして中東の産油国など。人口はそれほど多くないけれど、一人ひとりがたっぷり電気を使う国々です。「国として多い」と「一人が多く使う」は、まったく別の話なのですね。

一人あたりが多いのは、どんな国?
では、一人あたりの電気使用量が多い国には、どんな共通点があるのでしょうか。ひとつは「気候がきびしい国」。とても寒い(あるいは暑い)国では、暖房や冷房に多くの電気を使います。北欧やカナダが上位に来るのは、長く寒い冬を電気で乗り切っているためです。
もうひとつは「電気が豊富で安い国」。水力や地熱、あるいは石油などの資源にめぐまれ、電気を安く大量に作れる国では、産業でも家庭でも、電気をたっぷり使う傾向があります。たとえば、地熱と水力が豊富なアイスランドは、一人あたりの電力消費量が世界でもトップクラス。豊かな資源が、電気の使い方にも表れているのです。
中東の産油国で一人あたりの使用量が多いのも、同じ理由です。石油や天然ガスが豊富で電気が安いうえ、砂漠の国では冷房が一年じゅう欠かせません。安い電気をふんだんに使える環境が、一人あたりの数字を押し上げているのです。その土地の気候と資源が、電気の使い方をこれほど左右するというのは、興味深いですね。
なぜ、国によって差が出るの?
ここまで見てきたように、国ごとの電気の使用量は、いくつかの要素が重なって決まります。整理すると、大きく4つ。「気候(冷暖房の必要性)」「産業(工場や製造業の多さ)」「生活水準(家電の普及度)」、そして「資源と電気の安さ」です。
暑さ寒さがきびしく、産業がさかんで、暮らしが豊かで、電気が安い——こうした条件がそろうほど、電気をたくさん使うことになります。逆に、温暖な気候で、電気が貴重な国では、使用量は少なくなります。世界の電気の使われ方には、その国の気候や経済、暮らしぶりが、そのまま映し出されているのですね。

日本の立ち位置は?
では、私たちの日本はどうでしょうか。国全体の総量で見ると、日本は世界でも上位に入る、電気をたくさん使う国のひとつです。世界有数の経済大国であり、産業もさかんですから、当然といえば当然でしょう。いっぽう、一人あたりで見ると、上位の国々ほどではなく、中くらいから、やや多めの位置にあります。
資源にとぼしい日本は、電気を作るための燃料の多くを輸入にたよっています。だからこそ、省エネの技術を磨き、限られた電気を大切に使う文化が育ってきました。家電の省エネ性能の高さなどは、まさにその成果。「たくさん使う」だけでなく「かしこく使う」という点で、日本は世界に誇れる国だといえます。
ちなみに、日本で使われる電気は、家庭よりも、工場やオフィスなどの産業・業務用が大きな割合を占めています。私たちが家庭で節電することはもちろん大切ですが、社会全体で見ると、産業分野での省エネも、とても大きな意味を持ちます。国全体の電気の使い方は、家庭と産業の“両輪”で成り立っているのですね。
これからの世界の電気
世界の電気の使用量は、これからも増えていくと見られています。経済が成長する新興国では、これから多くの人が、私たちのような便利な電気の暮らしを手に入れていくからです。同時に、地球温暖化への対策として、いかに省エネを進め、太陽光や風力といった再生可能エネルギーに切りかえていくかが、世界共通の大きな課題になっています。電気の使い方は、地球の未来とも深くつながっているのです。
さらにこれからは、電気自動車の普及や、データセンターなどデジタル分野の拡大によって、世界の電力需要はいっそう増えると見られています。「電気をどう作り、どう賢く使うか」は、私たち一人ひとりの暮らしから地球規模の課題まで、あらゆるレベルで、ますます重要になっていくでしょう。
まとめ
世界で一番電気を使う国は、総量では中国。でも「一人あたり」で見ると、カナダや北欧、産油国などが上位になり、順位はがらりと変わります。国ごとの差は、気候・産業・生活水準・資源といった要素で決まり、その国の姿を映し出しています。日本は「たくさん使い、かしこく使う」国。世界の電気事情を知ると、自分たちの暮らしも少し違って見えてきますね。