
前回は電線から入る雷(サージ)への備えでした。今回は空から直接やってくる雷への備え——建物の雷保護です。建築基準法は、高さ20mを超える建物に避雷設備の設置を義務づけています。ビルの屋上のあの棒には、法律とJIS規格の裏付けがあるのです。屋上の棒の正体を、今日は解き明かします。
やさしい解説
雷保護のしくみは、3つの部品のリレーで成り立ちます。①受雷部——屋上の突針や導体で、雷を「安全に受け止める」役。②引下げ導線——受けた雷の電流を、建物の壁づたいに地面へ「流す」役。③接地極——大地へ「逃がす」最終ランナー。またしても接地(第41回〜)の登場です。雷保護は、避けるのではなく、通り道を用意して無害化する技術なのです。3人のリレーがひとつでも途切れると、電流は思わぬ道を暴れます。
作り方の詳細は、JISの雷保護規格(第9回でご紹介した「法令が引用する規格」の好例です)が定めています。建物の高さや用途に応じた保護レベル、受雷部の配置、導線の経路——設計は緻密な計算に基づきます。20m以下の建物には義務はありませんが、周囲より高い家や開けた場所の建物では、任意で設ける例もあります。規格に沿った設計かどうかは、竣工図書で確かめられます。

暮らし・現場との関わり
マンションやオフィスビルにお住まい・お勤めの方は、知らないうちにこの設備に守られています。ただし避雷設備も設備である以上、劣化します。導線の断線・腐食、接地極の抵抗上昇——定期的な点検と測定(建物の定期報告制度は第67回で予定)が、いざという日の実力を保ちます。屋上の点検は、防水や設備の点検と合わせて頼むと効率的です。
戸建てにお住まいの方への朗報は、「建物の雷保護」と「機器の雷保護」は別々に考えられる、ということ。20m以下の住宅で現実的な優先順位は、前回のSPDと適切な接地です。空からの直撃は建物側、電線からの侵入はSPD——役割分担で考えると、雷対策の全体像がすっきり見えます。守りの主役を取り違えないことが、賢い雷対策の第一歩です。
まとめ
高さ20m超の建物には避雷設備の義務。受けて・流して・逃がす3部品のリレーを、JISが支えます。グループEの締めくくりとなる次回は、ブレーカーたちの連携プレー——保護協調です。
※本記事は2026年7月時点の制度をもとに、内容をやさしく要約したものです。個別の判断は一次情報や専門家にご確認ください。