
直流(DC)は、常に一定の向きに流れる電気。交流(AC)は、流れる向きが周期的に入れ替わる電気です。私たちの暮らしは、この2種類の電気の使い分けで成り立っています。
やさしい解説
直流の代表は、乾電池やバッテリーの電気です。プラスからマイナスへ、いつも同じ向きに流れます。グラフにすると、まっすぐな一本の線。スマホやパソコン、LEDなどの電子機器は、内部ではこの直流で動いています。
いっぽう交流の代表は、家庭のコンセントの電気です。向きが1秒間に50回または60回も入れ替わっていて、グラフにすると波の形になります。交流の最大の強みは、変圧器で電圧をかんたんに上げ下げできること。この性質のおかげで、発電所から高い電圧で効率よく電気を送り、家の近くで安全な電圧まで下げる、という送電のしくみが実現しています。
つまり、「送るのが得意な交流」と「ためる・精密に使うのが得意な直流」。それぞれの得意分野を活かして、役割分担しているのです。
歴史の豆知識をひとつ。19世紀の終わり、発明王エジソンは直流での送電を、発明家テスラと実業家ウェスティングハウスは交流での送電を主張し、「電流戦争」と呼ばれる激しい争いを繰り広げました。軍配が上がったのは、電圧を変えやすく遠くまで送れる交流。以来100年以上、世界の送電は交流が主役を務めています。
暮らしとの関わり・注意点
コンセントの交流を、機器が使う直流に変換しているのが、スマホ充電器やノートパソコン電源の「ACアダプター」です。あの四角い箱の中で、交流100Vを直流の低い電圧に整えています。充電器がほんのり温かくなるのは、変換のときに少しだけ熱が生まれるからです。
そして今、直流の存在感が増しています。太陽光発電がつくる電気も、蓄電池や電気自動車(EV)にためる電気も、すべて直流だからです。太陽光の直流を家庭用の交流に変える「パワーコンディショナー」など、直流と交流を橋渡しする機器が、これからの暮らしのカギを握っています。
身近なところでは、USBの給電(5Vの直流)がどんどん広がっています。壁のコンセントにUSBポートを組み込んだ「USBコンセント」も人気で、アダプターなしでスマホを充電できて便利です。また、EVの急速充電器が短時間で充電できるのは、交流を介さず直流で一気に電気を送り込むから。「直流の復権」は、これからの電気の大きなトレンドです。
豆知識をもうひとつ。「AC100V」という数字は、波打つ交流の“平均的な実力”を表した値(実効値)で、波の頂点では瞬間的に約141Vに達しています。それでも100Vと呼ぶのは、直流100Vと同じ働きをする大きさだから。何気ない表示にも、ちゃんと理屈が隠れています。
ご自宅の中の「直流で動くもの」を数えてみるのも面白いですよ。スマホ、リモコン、置き時計、ワイヤレスイヤホン、電動歯ブラシ——電池で動くものは、すべて直流の仲間。コンセントの向こうは交流、手もとの機器は直流。私たちは毎日、2つの電気を行き来しながら暮らしているのです。
関連する用語
交流の性質である「周波数(Hz)」、変換を担う「ACアダプター」「パワーコンディショナー」、直流をためる「蓄電池」「リチウムイオン電池」が関連用語です。交流の2方式「単相と三相」も、次の項でやさしく解説します。